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パターン認識と機械学習 - ベイズ理論による統計的予測:コメント

日本語版によせて (原著者より)

It is just over a year since the English edition of Pattern Recognition and Machine Learning was first published, and the book has already been widely adopted for courses taught in many different countries. I am delighted that the book has now been translated into Japanese, and I believe this translation will play a significant role in further broadening the impact of the book. I have been very impressed by the care and thoroughness which the translators have shown in preparing this translation, and I would like to thank them for their tremendous enthusiasm and hard work. I would also like to take the opportunity, once again, to thank Markus Svensén, who has been very helpful in providing responses to the many detailed questions from the translation team.

Chris Bishop
Cambridge
October 2007


原著の英語版 Pattern Recognition and Machine Learning が 最初に出版されてからちょうど1年がたち, すでにいろいろな国の講義で幅広く採用されてきました. 今回この本が日本語に翻訳されることをうれしく思います. また,この本をさらに多くの方々に役立てていただくために, この翻訳は重要なものとなるでしょう. この翻訳を,翻訳者陣が,注意深くかつ綿密に準備したことには感銘を受けました. そして,彼らの非凡な熱意と困難な作業に対して感謝します. さらに,翻訳者陣からの多くの詳細な質問への 回答でお世話になったMarkus Svensénにも この場を借りて感謝を述べます.

2007 年 10 月ケンブリッジにて C.M. ビショップ

訳者あとがき

学習能力は人間の知的能力の代表的なものの一つであり,その機械化は工学的な応用面からも,知的活動の理解という観点からも重要な研究課題であり,多くの分野で研究されてきた. 特に,工学的な応用の側面からはパターン認識として統計の分野で,知的活動の対象としての側面からは機械学習として人工知能の分野で,多くの研究がある.近年,この分野の成果の社会に与えるインパクトに対する期待は大きく,研究人口も増加しつつある.パターン認識機械学習に関する教科書や専門書はいくつか出版されているが,両分野を幅広くカバーした日本語の本は残念ながらまだ出版されていない. 訳者らは,これからこの分野を勉強しようとする若い人々に推薦できる良書はないものかと探していたが,2006年に出版されたC.M. ビショップの Pattern Recognition and Machine Learning に注目した. 確固たる基盤を持つベイズ理論の視点から幅広く機械学習の主要分野をバランスよくカバーしている. 統計よりであるため,人工知能で扱う概念学習,クラスタリング強化学習,一階述語論理に基礎を置く帰納論理プログラミング,極限における同定などの計算論的学習理論などのいくつかの手法がカバーされていないが,カーネル法,サポートベクトルマシンなど最新の手法はカバーされており,一冊でこれだけのことを学べる著書は他にはなく,質量ともに著者の力量を強く感じた. 専門家はもちろんのこと,人工知能,機械学習データマイニングの応用技術に興味のある大学,企業の研究者,これからこの分野を勉強しようとする学部ならびに大学院の学生に読んでもらいたいと思う良書である.

専門家であれば原書で事足りるであろうが,分野の急速な広がりを考えると翻訳本による技術普及の効果は非常に大きいと鑑み,日本語に翻訳してみようと強く思うに至った.一気に読み通すのは骨が折れるが,大学の研究室のセミナーなどで使うには格好の教科書となることを期待している. 翻訳は,各章の内容を専門とする若手・中堅の第一線の研究者が担当し(計14名),それとは別に,この分野に精通した経験豊富な研究者2名が各章の監訳を担当し(計5名),最適な布陣で臨んだ.

全部を一人の訳者が担当するのではないため,翻訳に際しては,全体の調整が問題となる.上記19名からなる翻訳チームを結成し,神嶌がWikiホームページを立上げ,事務局として管理運営にあたった. 翻訳方針の決定と徹底,問題点の審議,意見調整など進捗管理に関するすべての審議は,Wikiを用いて全員参加の下で実施した. 翻訳に先立ち,索引に載っている語を全部拾い出し,用語の統一を最初に計った. 日本語の訳語が一意に決まらないもの,まだ定着していないものなどは,統計学事典,数学辞典,他の日本語の専門書などを調べ,合意に至るまで議論した. 一意に決めることができなかった語については第2訳語を準備した. 原書の意味が不明,解釈に曖昧性を伴うもの,明らかな誤りだと思われるものは,すべて原著者に問い合わせ,一つ一つ明確にしていった. おかげで,原書の誤り発見,訂正にも大きく貢献できた. 人名も数学辞典か統計学辞典に載っていればカタカナ,それ以外は原綴りとするなど,細部に気を配った.さらに,原著のサイズは横幅が広く,日本の通常の科学技術出版図書のサイズ(B5版)とは異なっているため,図や本文のレイアウトも大幅に変更する必要があり,これらを最初に統一してから翻訳を開始した.文体は,翻訳とは言え,直訳を避け,意味が正しく伝わることを大前提に,できるだけ自然な日本語とするよう心がけた. このように万全の体制で臨んだため,すべての作業を計画通り順調に進めることができ,予定通りのスケジュールで出版することができた.また,原著には副題がないが,原著者の了解を得て,訳本には邦題「パターン認識機械学習」の他に本書の著者の意図を反映した副題「ベイズ理論による統計的予測」をつけることにした. また,分量が多いため,出版社と相談の上,上巻,下巻の2冊に分けて出版することにした. 翻訳の出来映えは読者の評価を受けるしかないが,訳者一同自信を持って一読を薦めることのできるものに仕上がったと自負している. 我国では,機械学習の高度な手法を用いた本格的な応用研究はまだ途に就いたばかりである. バイオ・製薬・医療分野,流通・小売分野,金融・マーケティング分野,通信分野,製造分野のどれ1つをとっても,本書で紹介した手法が大いに貢献できる.本書を読み,パターン認識機械学習分野の研究が一層さかんになり,各応用分野で目に見える成果が出てくることを期待する.

2007 年 10 月
翻訳チーム代表
元田 浩


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Last-modified: 2010-02-11 (木) 16:11:14