人工知能学会30周年記念式典†
このページはしましまが人工知能学会30周年記念に参加してとったメモです.私の主観や勘違いが含まれていたり,私が全く分かってなかったりしていますので,その点を注意してご覧ください.誤りがあれば,指摘してください.
会長挨拶:データで見る人工知能学会の30年†
山田 誠二
人工知能学会誌:1986 9月号,vol.1, no.1
- 山田会長,松原前会長の論文を掲載 ← 当時博士課程
全国大会:2000年までは東京,2001年の島根から地方開催
- 2010年 長崎から,屋外で懇親会
- 2015 北九州は,東京以外で2回目になるのは始めて
- 2017は名古屋,2017/5/23-26
- 発表数はほぼ単調増加傾向,参加者数は1988〜89をピークに減っていたが,2001年以降は徐々に増加し,2012年からは急に増加
- 会員数:1992年のピーク(4280)から2011年まで単調減少(2800),現在に向けて増加傾向で現在は4339人
- 賛助会員(法人):1990年がピークで2011まで減少,その後増加したがピークには達していない
今後(3年ぐらい)
- ブームに乗りつつも,ブーム後に何を残すのか
- 日本発の分野が生まれてくるように,企業とのコラボレーション
来賓挨拶†
瀧寛 和
- 人工知能とは何かについてまとまった定義はない
- 人工知能脅威論や過大な期待
- 70年代の冬の時代:アプリケーションが積み木の世界
- 80年代,ファイゲンバウムの知識工学
- 知識ベースの構築が問題(専門家から獲得できない,ナレッジ・エンジニアが必要)→ 知識獲得ボトルネックから冬の時代に
- 90年代〜:オントロジー,機械学習,パーセプトロンの限界を超えたニューラルネット が出てきたが冬の時代はすぎず
- 10年代〜:深層学習の登場で冬を脱する
- 画像分野のSIFT特徴量と類似性ベースの研究がベースになったのでは?
今後
- 若手の雇用の安定の重要性
- 現在の携帯のように,人工知能技術も生活に欠かせないものに
招待講演 人工知能研究の歴史と未来:日本からの発信†
中島 秀之
- 2016年:AIの講演が激増,10月は1週間に5回も
- 知能の定義:情報が不足した状況で(ヒューリスティックスにより)適切に処理する能力(知能の物語,2015,p154)
- 加速する歴史:物質の制御,エネルギーの制御,情報の制御→超スマート社会(Society 5.0)
- 環境知能:ユビキタス,ambient intelligene Cyber assist, cyber physical systems, IoT
- AI は IT の一部.ちゃんと使えるようになったら AI技術はIT技術と呼ばれるようになる
- AITechnology{が/で}社会を変える
- 既存の社会システムをIT技術で処理するだけでなく,IT/AI技術によって始めて可能になる社会システムへ
- 会社などの組織はミッションごとにつくればいい
- 代議員制以外の社会的意思決定システム
- 仕事による収入がなくてもまわる経済システム(シェアリングエコノミー)
- 知能研究の立場の変遷
- 物理記号システム仮説 (physical symbol system hypothesis):Nweell/Simon 知能の本質は記号処理
- パターン認識(世界の文節化):ニューラルネット,画像
- 環境とのインタラクション
- 世界の文節化(知能にとって意味のある同値類を抽出),言葉として外在化できる必要はない(暗黙知を扱う,潜在構造),コミュニケーションに用いる場合は外在化
- Minskyのフレーム:人間の環境認識はトップダウン,マシンはボトムアップ → フレームという枠でトップダウンを実現
- 記号処理の問題:フレーム問題,シンボルグラウンディング,常識推論(正しい常識推論の存在) → 記号処理の限界
- 身体性:能動的な働きかけをする機構を持たないと,創造性(自分が作ったものの評価)はないのではないか
- 常識推論否定情報が複数あると複数の推論結果,Yale射撃問題(結果の定義されていない動作)
- サブサンプションアーキテクチャ:認識,推論,行動を同時に
- ロボット:中島定義では「手足を持ったAI」
- モラベックのクリスマスブッシュ(いろいろな形状のとれるロボット)
- 環境との相互作用を重視する知能観,
- Uexküll:環世界「生物から見た世界」
- 1829-1905年,環境が生物が作り出す,主体が刺激を求める(アフォーダンスと逆向き)ダニは4種類のセンサーしかないが,外部信号を自分で選別しており,オートマトンとは違う
- 社会知能:集団としての感情・知能,模倣(ミラーニューロン)/他人のモデル/共進化
- アリは,個体を細胞として捉えた方が生物として理解しやすいのでは?
- 学習が重要:鳥やくじらは歌を親から学ぶ,集団による狩り,人間に育てられたチンパンジーは本能で性的興奮は可能だが交尾はできない
- 人間理解の階層:社会,個人,臓器,細胞,分子 などの階層を扱えるように
- Jeff Hawkins: on Intelligence
- 大脳皮質の6層構造,トップダウンとボトムアップの融合
- 脳は外界からの情報と,脳自身が作った情報を区別できない
- AIをめぐる論争
- 否定:中国語の部屋,入出力のみ知的→弱いAI,背後の理解→強いAI
- 反論:[Levesque IJCAI 2009] 足し算の部屋,計算量的に入出力のみ知的というのは不可能,サールには計算量の概念がない
集団の統合原理
- 規範:無矛盾世界観 ⇔ 容矛盾世界観:集団ごとに矛盾があってもよいか
- 科学:分析的 ⇔ 工学:構成的
- Simon:Sciences of the Artificial
- designの重要性,19世紀までは工学を教えていたが,20世紀に工学になった
- 学と術:科学 ー 工学 ー 芸術 → 工学の方法論:FNSダイアグラム
- Singularity:元々は When humans transcend biology
- カーツワイルの本来の趣旨:人間が生物としての枠を超える,人間と機械が共に高みにのぼる
- 脅威論では,機械が人間をおいていくことになっている
- 人間の能力は,知識の拡大により教育すれば拡大するはず
- 機械学習の問題点:すごく離れた結果を無視する,予期がない
- 知覚循環モデル [Neisser 1976]
パネルセッション「知能系学会サバイバル」†
大森 隆司(認知学会)萩原 将文(知能情報ファジィ)藤田 欣也(ヒューマンインターフェース)岩田 和秀(人工知能学会)司会:矢入 健久
認知科学会:約1000人,1983年設立,大会は1984年〜
- 認知科学:情報科学 + 脳科学 + 心理学
- 地道に着実に,初期は情報系と心理系が半分ずつぐらいだったが,今は心理系が多い
日本知能情報ファジィ学会:755人
- 1965年の Zadeh(現在95歳)によるファジィ集合,1989年日本ファジィ学会設立,2003年に現在の名称に変更
- ファジィ:あいまいさ,人間の主観の扱い
- 新しい国際会議 SCIS を創設 (2002年)
ヒューマンインターフェース学会:1157人
- 1985年 HIシンポジウム(計測自動制御学会)→ 1999に学会として独立,2004年:事務局を独立した企業に
- 事務局:外注形態なので,他の学会の仕事も引き受ける
- 飛行学系会員が多い,国際会議 HCII,IJHCI誌の割引購読仲介
人工知能学会:
- 産業ロボットブーム 1967年〜:大量失業時代が到来すると言われていた
- 人工知能学会設立 1986年設立
現在の人工知能ブームをどう捉えるのか?
- AI学会の会員増加はブームの影響
- AIブームに対する各学会のスタンス
- ファ:積極的,HI/認知:消極的
- 認知科学会では,深層学習も分かった時点でブームが終わり,次に人間の知能への研究の回帰がある(と信じている)
- ブームは本物であるか?
- ブームに対する危惧は?
- 認知:研究投資が深層学習に集まっていて,先行研究に追随するための負けないための投資になっている
- AI学会をうらやましく思うか?
- ファ,HI:大人な対応,認知:黒船ブームにのってずるい
- 学会がすべきことは?
- 認知:ブームを作るマスコミにまかせて,先を見据えた研究を
- AI岩田:業界団体が必要なのでは?AI学会の賛助会員になる動機として同業他社との繋がりを求めるものがある.
今後について
- 研究分野は安泰?
- 認知:安泰,HI/ファ:危機感
- HI:デバイスがHIのあり方を変えているので同じことをしていたらダメになる
- 学会の解散や合併
- 認知:ない,HI:長期的には必然,ファ:10年前に解散を論じた
- 学会の使命は?
- 学会が生き残りを目的とすべきなのか?
表彰式など†
第二回全脳アーキテクチャ・ハッカソン「みんなで作る認知アーキテクチャ」概要説明と表彰式†
- 人類と共に歩むAIの姿を模索するために,オープンなAI開発を
- 汎用人工知能:人間のような広範な適用範囲と強力な汎化能力を持つ人工知能
- 特化型AI ⇔ 汎用AI:設計時の想定を超えた新しい問題の解決
- AIによる労働の代替で資本効率が向上
- AI開発のオープン化が必要:Open AI, a partnership on AI
- AI学会の汎用人工知能研究会
- 人材育成:冬の時代に人を育ててこなかった
- ハッカソン:11チームのエントリー
「みんなでつくる認知アーキテクチャ」審査報告
- 優秀賞:該当なし,学術的側面が弱い
- 奨励賞:Accumulatorモデルに基づく行動抑制型認知アーキテクチャ
人狼知能コンテスト概要説明と表彰式†
- 人狼知能プロジェクト http://aiwolf.org
- 次にAIが解くゲーム:不完全情報,信頼と欺瞞,コミュニケーション
- 人狼:10人の中で二人は敵がいる.会話をしながら敵を見つけ,毎ターン投票で排除すると共に,敵もだれかを排除できる.プレイヤーにはさまざまな役職がある.
- 第2回人狼知能大会:動作したのは37チーム→15チームが決勝に,38400回の対戦で勝率で順位決定
- 3位:carlo,2位:wasabi,1位:Udon(連覇)
30周年記念論文表彰式†