人工知能学会 第64回 人工知能基本問題研究会 (SIG-FPAI)

第9回 情報論的学習理論ワークショップ (IBIS 2006)

このページはしましまがIBIS2006に参加してとったメモです. 私の主観や勘違いが含まれていたり,私が全く分かってなかったりしていますので,その点を注意してご覧ください.誤りがあれば,指摘してください.

マルコフネットワークとベイジアンネットワーク

鈴木譲(大阪大学)

条件付独立

I(X,Z,Y) は Z が与えられたときに,X と Y は独立.

それぞれ,どのようなモデルが表現できて,どのようなものが表現できるのか.

マルコフネット

X と Y の間に Z 中のノードが必ずある.

X,Y は Z でブロックされる <X|Z|Y>

X,Y,Z∈V の要素を確率変数に対応付け

I(X,Z,Y) ⇒ <X|Z|Y> ... D-map
<X|Z|Y> ⇒ I(X,Z,Y) ... I-map
I-map + D-map = Perfect-map

一個削ると I-map でなくなる極小 I-map がマルコフネット.

ベイジアンネット

ブロックは,依存性の→が X→{z∈Z}→Y,X←{z∈Z}→Y,X→{z¬∈Z}←Y

I(F1,{M1,M2},F2) & I(M1,{F1,F2},M2) のパターンはマルコフネットはOKだが,有向非循環グラフにできないので,ベイジアンネットは無理

木構造の場合

ベイジアンネットはノード数に比例する時間で計算できる. クリーク(完全部分グラフ)をノードとするジャンクションツリーに変換して効率的に計算

chordalなマルコフネット:たかだか3角形のループしかできない

ジャンクションツリーの生成が容易で,比較的計算は容易. このchordalであることが,マルコフとベイジアンの両方で表現できる必要十分条件.

因果的差分検出手法の振舞いの検証

村上知子 (株式会社東芝)

差分の分析

データ集合 A と B の差分

手法: クロス集計,χ2乗検定,相関ルール

因果的差分:差分が生じた原因を調べる

Causal Difference Detection using Bayesian Networks (CDDBN)

専門家がグラフを定義→パラメター学習によりベイジアンネットを生成→パラメータの比較で因果的差分を検出

複写機の障害診断における確率推論アルゴリズムの実験評価

山田紀一、足立康二(富士ゼロックス)、本村陽一(産総研)

障害診断モデルの構築

内部状態とトラブルの症状から,交換する部分(故障診断箇所)を特定する.

ジャンクションツリーより,LoopBP は同等の予測精度で,メモリや計算量のメリット.

ダイナミックベイジアンネットワークを用いた麻酔行為の表現

白鳥成彦、奥出直人(慶應義塾大学 政策・メディア研究科)

麻酔情報の提供によって手術をサポート:事前のwarining,emergencyの検出,代替案の提案

  1. 時間幅が一定のベイジアンネットでは時間幅が一定だと表現効率が悪い
  2. 個人のモデルをより柔軟に表現できるべき

階層的ベイジアンネットモデル

細分化によって,適切な粒度でのモデリングが可能.

ベイズネット分類器による重要文書推定における構造学習の効果

磯崎隆司(富士ゼロックス(株)研究本部)

半教師ありの学習をするベイジアンネット

携帯電話ユーザのための映画嗜好モデル構築と映画推薦システム

小野智弘(株式会社KDDI研究所)、黒川茂莉(慶應義塾大学)、本村陽一、麻生英樹(産総研)

個人化 + 状況依存性 + 即時性を考慮した映画の推薦 → 複数の要因を考慮するためにベイジアンネットを導入

ベイジアンネットワークを用いた消費者の金融商品選択モデル

田中隆博、金子泰敏、末吉英範、瀧川孝幸(株式会社 野村総合研究所)、本村 陽一(産総研)

デモグラフィックな特徴に加え,心理的なサイコグラフィックな要因を考慮する.

顧客分析の問題

保険型,貯蓄型,投資型に分けて,定性的な考察に基づきネットワークを構築.

パネル「因果モデリングへの期待」

司会:本村陽一氏 パネリスト:植野先生(電通大)、黒木先生(阪大)、鈴木先生(阪大)

因果モデル構築のためのソフトウェア「Bayesian Discovery」の紹介(植野先生)

「因果の発見と検証に関して」(黒木先生)

招待講演:情報統計力学の深化と展開〜情報学でも“More is different”!〜

樺島祥介先生(東京工業大学)

モノの科学(情報科学)とコトの科学(自然科学)

More is differnt (P.W.AndersonのScience(1972)の論文) という視点

例:磁石のモデル

情報学における more is different

オーガナイズド・セッション「確率モデルと集団最適化

「確率モデルと集団最適化入門」

赤穂昭太郎(産総研)

複雑な最適化問題

提案分布での工夫

最小値探索と期待値計算

GA

  1. 選択:p(x)に従ってサンプリング
  2. 突然変異:q(x'x)で個体を移動
  3. 交差:(?)

構造獲得と最適化

関連研究

「確率的学習と進化論的手法の統合」

伊庭斉志(東大)

遺伝的アルゴリズム

GAの構成要素:集団による多様性維持,選択,交差と突然変異にようる遺伝子の置き換え

GAの長所・短所

EDA (estimation of distribution algorithm)

確率分布モデルと更新規則の違いでいろいろな種類:UMDA, PBIL (Population Based Incremental Learning), コンパクトGA

EDP

GA→EDA から GP→EDP

オーガナイズド・セッション「自然言語とゲノム言語への統計的アプローチ」

「ゲノム言語と確率モデル

浅井潔(東大)

ゲノムの構造:promoter→TSS→start codon→{exon→5'splice site→5'splice site→intron}*→stop codon→poly site

その後は:mRNA→タンパク質の一次構造→立体構造→転写を制御

「RNA配列解析のためのカーネル関数の設計と応用」

榊原康文(慶大)

DNA配列をベクトルに

非コードRNA: 98%が非コードRNA.RNAi(RNA干渉)による発現制御,選択的スプライシング,RNAネットワーク
→ シグナルが弱く,部位の特定が難しい.

進化すると,転写されない領域(人:55%),転写されるが翻訳されない領域の割合(ヒト:43%)が増える

非コードRNAは2次構造を持つ→この2次構造を導く配列を手がかりに非コードRNAを探す.

この2次構造パターンはどうやって見つけるか?→こうした非数値的なデータを特徴ベクトルに変換.

→ベクトルの次元数が,文字数に対して指数的に増加してしまう.
→高次元を効率的に計算するため,カーネルの導入.ベクトルを明示的に求めるより内積を効率的に計算.

RNA配列用ステムカーネル

ステムベクトル:アミノ酸列が折れ曲がった突起状の構造をステムという.これには,塩基の相補対(AT)(TA)(GC)(CG)が重要なので,このステムの候補の数を数える.

必ずしも連続していない候補の列を数える:長さ2の例 (A-(A-T)-T),(A-(T-A)-T)....(G-(G-c)-C) の16次元ベクトル.

ステムカーネル:全ての長さのステムベクトルの内積を計算.配列の長さに関して帰納的に計算し,動的計画法で効率的に計算.

マイナーな改良

「非整列RNA配列群からの頻出ステムパターンのマイニング」

浜田道昭(みずほ情総研) 津田宏治(Max Planck Institute) 工藤拓(グーグル) 金大真(産総研) 浅井潔(東大)

問題設定

2次構造パターン:ステムのパターン

モデル

目標:支持度がminsupport以上でと,ノードのコストの総和がmaxcostのステムパターンを列挙する.

グラフマイニングのgSpanアルゴリズムが基本:深さ優先探索.DFSコードによるパターンの管理 (IBIS2005の猪口のグラフマイニングのチュートリアルを参照)

「Knowledge discovery and hypothesis generation from biomedical texts」

小池麻子(日立)

要求

タンパク質/遺伝子名認識

機能用語の開発:Gene Ontoroly (GO) を基盤に

潜在的知識発見と仮説生成

Open Discovery: 発表されている文献の関係を組み合わせて発見を

知識発見の難しさ

特別講演:「脳情報復号化によるブレイン−マシン・インターフェース」

神谷之康(ATR脳情報研究所)

脳から心を読むにはどうすればよいのか

符号化・復号化:perception, 認知,行動 ←→ 脳活動=code

fMRIによるニューロイメージング

知覚内容のデコーディング

古典的コーディング解析 http://viperlib.york.ac.uk/

fMRI画像で観測すると,fMRI画像の画素一つに複数のコラム(特定の傾きに応答する神経細胞の集まり)が含まれてしまう.

アンサンブル特徴選択

fMRIの画素が対応する部位を脳の表面にマップする → ヒトによって発現部位が違う.他人の脳で訓練した識別器は使えない.

右斜めと左斜め縞が重なった画像を見せ,どちらかの縞を意識してもらう.→ 脳の反応からは,高次の意識が反映されて,意識した方の縞に対する反応が見られる.

運動方向の選択性と,傾きの選択性を比べると,1次→4次の視覚野で,運動は反応が向上するが,傾きは低下する.

変分ベイズを用いた画素選択:デコードに利用する画素(特徴)の選択.

脳のデコーディング

BMI (brain machine interface)

→ 予測刺激から刺激を生成するループなどを使った実験へ発展


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Last-modified: 2010-02-11 (木) 16:12:16