人工知能学会第35回全国大会†
- このページはしましまが人工知能学会全国大会2021に参加してとったメモです.私の主観や勘違いが含まれていたり,私が全く分かってなかったりしていますので,その点を注意してご覧ください.誤りがあれば,指摘してください.
6月8日 (火) 1日目†
[1A1-PS-1-01] 社会と人工知能†
野田 五十樹1 (産業技術総合研究所)
- 人工知能の研究とは → 「新しい問い」をたてること
- 知能研究の歴史=問い直しの歴史
- 計算こそ知能 → 推論・学習ができれば → 知識表現 + 推論 → 特徴表現・十分なデータがあれば?
- 記号処理とパターン処理の融合
- 構造の接地 → 正規文法,浅い埋め込みはできた → 計算量,データ不足,より複雑な文法はできなかった
- RoboCup https://www.robocup.org
- 2050年までに人間のワールドカップのチャンピオンに勝てる
- シミュレーションと実機の両方
- チェスに対して,動的,実時間,部分観測,連続状況
- 現在でも人間の方が高度な連携が可能でまだまだ
- レスキュー,ダンスなどサッカー以外にも拡大
- 実用化:Amazon KIVA(倉庫)Quince(福島原発)
- 減災AI:災害救助シミュレーション,減災情報共有システム,人流シミュレーション
- 社会の可視化 ← 全体で何か起きているか把握できない
- 網羅的シミュレーションによる訓練設計支援
- 人間を訓練するときに,避難で生じる問題点を洗い出す
- 駅からの避難,
- 各ポイントで,拙速か巧遅かを選択する → 定型の動作を完璧にする訓練と臨機応変の対応の訓練
- 津波避難:指示の簡潔さ ⇔ 避難の効率
- オンデマンド交通:路線バスより効率的か?
- オンデマンドバスの方がスケールメリット
- 路線バスの方がよい場合 ← 限られた数の拠点間の移動がほとんど
- OACIS:大規模エージェントシミュレーション用のプラットフォーム
[1B2-KS-11-01] 社会が望むAIのかたち - サステナブルなAI社会を目指して -†
武田 英明(人工知能学会倫理委員会、国立情報学研究所)、江間 有沙(人工知能学会倫理委員会、東京大学)
AI社会における信頼の形成†
福島 俊一氏(科学技術振興機構 研究開発戦略センター フェロー)
Defense Aagainst the Dark Bots: How Microsoft Protects 1 Billion People with Machine Leanring†
安田 クリスティーナ氏(MyData Global 理事)
- 2017〜2019:サイバー攻撃は30倍,パスワード攻撃やフィッシングが多い
- 侵入パターンが非定型になって検出が難しくなってきている
- 不正ログインを検出する分類器を使い,不正が疑われるときは認証を厳しくする
- 機械学習の教師情報を作るのが非常に難しい
世界経済フォーラム第4次産業革命センター†
須賀 千鶴氏(世界経済フォーラム 第四次産業革命日本センター長)
- 第4次産業革命センター:13ヶ国にある
- データガバナンスを最重要課題とする提言
- 共通目的 (Common Purpose):医療などの共通利益,データ利用の文脈に依存した許諾など
- データ取引市場:交渉力の非対称性などにより,市場による価格形成では問題を生じる
- 規制のアップデート:人間の運転と自動運転では適切な規制が異なる
- アジャイル・ガバナンス:デジタル版法令審査機能
法律系の人†
平野 晋氏(中央大学 国際情報学部 教授)
- 過失責任:注意を払わなかったことに対する賠償
- 無過失責任:ハイリスクの場合には注意を払っていても
- EUの法規制:AIへの無過失責任,ハイリスク分野への利用規制
- 制御不可能性:不確実,予見不可能性
- 目標としてどのような社会を目指すのか
- 須賀:フォーラムでは,人間中心ということが掲げられているが,これがそもそも曖昧な概念
- 福島:AIの関わりで能力を向上
- 安田:信頼の構築
- 平野:リスクを指摘して,その改善を促す
- 誰のためのデータ
- 平野:功利主義を達成するようにという
- 安田:利用者満足を犠牲にしない持続可能性
- 福島:多様性を保ちつつ,何らかのガバナンスを
- 須賀:功利主義的な観点からの議論は法学にはあるので,その知見を活かすべき
- 人工知能技術に不確実性や予見不可能性があるが,実際に調査するとその程度は人間よりも相対的には小さく,また人間と違って規準を定めれば改善も可能と考えています.
現状の属人的な状態を改善するためには,むしろ人工知能技術なしにはほぼ不可能と立場についてはどう思われますでしょうか?
- 平野:興味深い質問を有難うございます。これは哲学的な考えで申し訳ないのですが、AIの制御不可能性云々と非難するけれども、ヒトも制御不可能であるし、予見不能なヒトも多いのに、何故AIばかりが非難されるのか?という疑問を私も抱いております。
- 社会的スコアリングは範囲も定義できないと思います.広く捉えれば,英検などのスキルレベルもスコアリングになってしまいます.逆に現状の返済能力のアメリカFICOスコアのようなかなり踏み込んだものがどうなるかも難しいと思います.
- 平野:はい。この論点だけでも一冊の本を書くことができるほど深いテーマだと思います。逆に言えば、その位深めてからでないと、一律に禁止というのは、いささか乱暴な気もします。
6月9日 (水) 2日目†
[2A2-PS-2-01] When AI Meets the Oldest Engineering Discipline†
Renate Fruchter1 (1. Stanford University)
- 建築は50万年前から始まった → 都市の形成
- 都市:エネルギー消費 40%,電力 73%,温室効果ガス 39%,90%の人工,49億人
- 建設労働力の不足と高齢化
- 人工知能技術が人々と建築産業ををどう変容させるのか?
- 目標:居住者のwell-being向上,居住者のwell-beingと建築の持続可能性,ステイクホルダーの参加
- well-beingの予測
- バイタルセンサーを使った計測情報に基づく人間の行動理解
- 動作情報とEEGなどの心理情報の統合
- 会議への参加率,疲労,ストレスなど
- well-beingと持続可能性の両立
- 居住者の状態・変遷,活動状況,建築物の状態変化のモデルを使ったシミュレーション
- 人のバイタルデータ,温度・湿度などの環境データ,建築物の状態データ
- 人によって同じ環境でもバイタルデータの挙動は大きく異なる
- ステイクホルダーの参加
- デジタル建築モデル,コミュニケーションツール,VRでのテスト
[2C3-OS-9] 人工知能におけるプライバシー,公平性,説明責任,透明性への学際的アプローチ†
[2C3-OS-9a-01] どのような属性の取り扱いが道徳的に悪いか?保険を通じた検討†
〇前田 春香1,2,3(1. 東京大学大学院、2. 理研AIPセンター、3. 日本学術振興会)
- 統計的に区別を付けるときに,悪意はないので,道徳的によいかどうか難しい
- 保険での倫理:属性(変化可能性,正確性,脆弱性),保険種別
[2C3-OS-9a-02] 社会厚生関数を用いた公平な因果効果†
〇金城 敬太1(1. 共立女子大学 ビジネス学部)
- Arrow, 1971:入力の平等=介入の平等,介入の平等=出力差の平等
- 現状の公平性は判断=入力の平等 → 介入効果=効用の平等を目指す
- 全体の効用:ロールズ=minmax,ベンサム=総和,ナッシュ=総積
[2C3-OS-9a-03] 機械教示と公平性配慮型機械学習を用いた無意識バイアスの矯正†
〇楊 明哲1、荒井 ひろみ2、馬場 雪乃1(1. 筑波大学、2. 理化学研究所)
- Wilsonの心的バイアスの補正 → 現状と公平な判断な差を際立たせる
- 公平モデルと不公平モデルを比較して差が大きいものが評価で重視すべき属性
- 特徴を提示することでより公平な人間の判断が促される
[2C4-OS-9b-01] 行政におけるAIの活用と信頼†
〇工藤 郁子1(1. 大阪大学)
- 行政裁量統制:法による制限は強力なので,運用の行政に裁量を持たせる
- 保育所マッチング=公平性・説明
- 予測警備=京都府警で導入,自主的に公平性に配慮
[2C4-OS-9b-02] 説明可能AIにおける対話型の対比的説明についての一検討†
——説明と因果に関する哲学的観点から――
〇濵本 鴻志1,2、葛谷 潤2、荒井 ひろみ2,3(1. 一橋大学、2. 理化学研究所、3. 科学技術振興機構)
- Mittelstadt, 2019:説明は透明性と事後解釈によるもの
- 透明性(微分による説明など)→ 受け取る人間の能力に依存
- 対比による説明:なぜQではなく,Pという出来事が起きたか?
- 説明の目的によって適切な説明は異なる
[2C4-OS-9b-03] 個人データ利活用の類型に応じた社会的受容性の質問紙調査†
〇森下 壮一郎1、高野 雅典1、武田 英明2、高 史明3、小川 祐樹4(1. 株式会社サイバーエージェント、2. 情報学研究所、3. 神奈川大学、4. 立命館大学)
- 主体,種別,処理結果,目的の四つの軸でいろいろなパターンの分析事例を想定し,それが受容されるかどうか調査
[2C4-OS-9b-04] パーソナルデータを用いたAIサービスの信頼性モデル化検討†
〇陶山 昂司1、江間 有沙1(1. 東京大学)
- ユーザ個人,サービス提供者,インタフェースの三つの要因に基づくモデル
- 推薦主体が人間・アルゴリズムよりも,インタラクションの重要性
6月10日 (木) 3日目†
[3G2-GS-2h-02] 学習係数による物理モデルの有効自由度評価†
〇本武 陽一1、永田 賢二2 (1. 統計数理研究所、2. 物質・材料研究機構)
- 仮説:物理学者のいう良いモデルとは,パラメータの事後分布が単峰になっている縮約モデル → モデルの自由エネルギーが正則モデルのそれに近づけばよい
- 既存手法はうまくいかなかったが,高精度の交換モンテカルロ法を使って対処
[3G2-GS-2h-03] 多数の介入候補の下での意思決定のための因果効果評価†
〇谷本 啓1,2,3、坂井 智哉1,3、竹之内 高志4,3、鹿島 久嗣2 (1. NEC、2. 京都大学、3. 理研AIP、4. 公立はこだて未来大学)
- 予測した最適行動が,実際に行ったときに,基準値以上になるかどうかで誤差を測る ← 普通は2乗誤差とかで測る
[3G2-GS-2h-04] Causal Treeに基づく選択バイアスを考慮した条件付き平均処置効果推定手法に関する一考察†
〇坪井 優樹1、阪井 優太1、鈴木 佐俊1、後藤 正幸1 (1. 早稲田大学)
- conditional average treatment effect:介入効果を測るときに,後でデータを個人属性などで条件付けして,部分集合にたいする介入効果を測る
[3G2-GS-2h-05] 個別介入効果を評価する商品推薦モデルに関する考察†
〇今福 太一1、川上 達也1、楊 添翔1、後藤 正幸1 (1. 早稲田大学)
- 推薦効果:推薦による購買確率の上昇量をRubin系の因果推論で求める
- counter factual regression:似た特徴の事例を,介入・対照の両群で回帰モデルをベースに作り出す
[3A3-PS-3-01] データから見る 新型コロナ禍の社会†
鳥海 不二夫1(1. 東京大学)
- 人々の行動データがデジタルデータ化 → 社会データ分析を用いて社会を理解
- 計算社会学:分野ができて10年ほど
新型コロナ禍における社会的感情の変化
- ツイートによる感情検出,Goler&Macy, 2011
- 感染者数とツイート数 → 第1波が増加のピークで,第4波では目立った増加はなくなった
- ツイートの増加が,局所的なコミュニティではなく,どれくらい社会全体に及んでいるか? → コミュニティで条件付けしてもどのコミュニティでも話題にされれていた
- ツイート中の感情語の変化:多い順から 厭>喜>…>恥
- 感染者が増えている時期は非ポジティブな感情が増える,第4波は反応が小さい
- 2020年2月:恐怖→驚き→ポジティブ感情の減少,有名人の死→驚き・悲しみ
新型コロナによる人々の行動変容
- 大阪都市圏の私鉄の乗降データ
- 2020年は最初の緊急事態宣言で大きく減り,その後も2年前の利用レベルを下回る
- 減少した駅:大学,観光地,繁華街,イベント会場に近いところが大きい,オフィス街や住宅街は3割減ぐらい
- 宣言解除後も,完全に回復した駅はなく自粛傾向は続いた
- 長時間移動が減っている,
- 再訪時間(同じ場所を再訪する時間)→ 短縮されている,ルーチン的な移動が増えている
- グループ移動:単独行動が増加している,グループ移動は7割ぐらいに
- 年代別:自粛期→10,20代は減,30-50代はやや減,70-は減,回復期→まぁ減っている
- 場所別:繁華街などは減っている,例外:伏見稲荷と有馬温泉
マスクを巡るC2Cサイトの購買行動
- 物不足:トイレットペーパーとマスク
- 初出品した人が売っているものはマスクだった
- 1/29:最初の感染確認で急増,3/15:転売規制で一時的に減るが再度増加
- マスクを買った人が継続的なC2Cのユーザになったか:マスクの需要がへると離脱していった ⇔ マスクを売った人はその後,他の商品を継続的に出品するようになる
新型コロナに関する情報の拡散
- ソーシャルメディアはよく使われているが,信用度は低い(総務省調査)
- トイレットペーパー:無くなるというデマではなく,実際にはデマの否定の方が広まっていた → デマに踊らされるかもしれない不安の方が影響した
- ワクチン情報は全体に広まっているが,反ワクチンやワクチン政策批判はコミュニティに偏り
- 変異種ではなく変異株と呼ぶように学会が呼びかけ → 専門家をリツイートする人は変異株に変わったが,そうでない人は変わらない
まとめ
- 実は社会の現状を知るナウキャストさえできていない → 計算社会学の第1の役割
6月11日 (金) 4日目†
チュートリアル:コンテンツ指向とAI†
- コンテンツに対する人間の処理
- コンテンツの特性:ユーザ,ニーズ,メディア,課題 → これらの特性を含めたAI適用
- 技術指向,課題指向 ⇔ コンテンツ指向:コンテンツを中心とした,クリエイタ,プロバイダ,ユーザなどのコンテンツ流通・消費のコミュニティの特性・特徴を活用
食コンテンツ†
井手 一郎
- ミニコン時代の歴史
- 1966年:Jim Shuther 家庭内情報処理システムを構築 → 献立設計,分量計算,購買リスト作成を試みるも失敗
- 1969年:米ハネウェル社,自宅用コンピュータ,今の価格で800万で,プログラミング講習付き
- 1970年:武藤ら,主催でレシピ検索・献立設計,家政学研究者と共同研究
- 食前の情報処理
- レシピサイト,米 epicurious (1995),日 Bob&Angie (1995) → 600万以上のレシピが存在
- レシピ検索:食材を入れ換えて柔軟に検索
- 代替食材の発見(肉じゃがのタマネギと長ネギに)
- 食味(味,食感)で検索:レシピと食味の関係を発見
- 典型度による検索:ふつうか,少し変わった,挑戦的な,標準的な食材の組合せを発→標準食材からの乖離で典型度を定義,レシピ生成のベースにもなる
- 食前の情報処理
- 調理支援インターフェース
- HappyCooking 2006:調理中の指定したところだけ詳細動画などを見れる
- 食中の情報処理
- 料理写真の魅力度推定:色味や食材から構図を推薦,いろいろな構図の画像を一対比較で得たデータ
- 食後の情報処理
- CEA2021:調理の国際ワークショップ https://sigcea.org/workshop/2021/
不動産コンテンツ†
清田 陽司
- HOME'S::不動産情報サイト,63ヶ国
- かざして検索:マンションの写真を撮って検索
- 空飛ぶホームズくん:3D地図からの検索
- 3D間取り:間取り図から3Dへの変換
- PRICEマップ:周辺の物件取引情報
- Walkability Index:住みやすさ指標
- 不動産コンテンツの特徴
- 推薦 ← 利用者情報,不動産や金融情報
- 不動産最大の特徴:全く同じ物件は一つしかなく,契約済みになったら除外 ⇔ 書籍などとは対象的 → 協調フィルタリングは適用できない
- 需給関係で価格が決まる,ヘドニックアプローチ
- 売り手と買い手で情報非対称性がある
- マルチメディア:構造データ,位置情報,写真画像,間取り図,センサーデータ
- 名寄せ:同じ物件が複数の代理店で扱われている.土地,建物ごとにまとめる
- コンテキスト:街(所在地,由来,人口動態)人(ライフイベント)
- 異分野研究者とのアジェンダ共有
- 空き家問題:増えている,定義が困難(介護施設にいる,民泊用)
- IEEE MIPR 2021:不動産特別セッション
漫画コンテンツ†
山西 良典
- 画像と言語でストーリーを表現
- 静的な紙面に音や動きなどの時間情報も集約
- セリフの縦書きや,見開きなどの視覚効果
- 漫画はアニメや映画の原作に
- コミック工学研究会:2019年〜
- 産学芸(術)の連携:電子化,人工知能技術と漫画家の共創
- 漫画家 小沢高広さん,初期のころからデジタルで漫画を発表
- 漫画のフォーマット:コマの順序,キャラクタ,コマ枠を超えても混ざらない,吹き出し中のテキスト,吹き出しの形状
- 暗黙の表現:左右の配置では右のキャラが強い ← 右から左への流れ
- 漫画制作のデジタル環境:タブレット,スクリーントーン
- 物語の作り
- 連載の打ち切りに対応した,小さなストーリーの組合せ
- ジャンル(少年,少女,青年)
- 漫画→アニメ
- 静止画を動画への変換
- 声優の経験知の具体化→感情表現,感情表現をしつつもセリフは聞き取れる必要,キャラクターが話す,アフレコ時にはコンテのようなものだけ,
- 複雑なコンテキスト:貴様→You,力関係が消える